試験的に複数の知人に使用してもらっていて、重大な欠点が判明しました。それはステッキ
杖を水に濡れた滑りやすい床面に斜めに突くと、スポッと滑り転倒したという報告です。
当方が使用時には感じなかった事ですが、その知人は両足関節が変形固定していて、ステ
ッキ杖を左右2本使用して杖と脚を交互に前に出し歩行しています。
よく観察して見ますと前方で杖を突き、脚を一歩進め杖が体幹部までくると、反対の杖と脚を
出して歩行しています。しかも両下肢が十分に上がらないので、靴を地面に擦りながら左右交 互に歩行します。杖を体幹部に引く時に一番体重の負荷を杖に掛けています。よって杖は体 幹部よりやや後方にくる(この時点で負荷を抜き、反対の杖は着地していて負荷を掛ける態 勢)だけです。1本のステッキ杖の場合、体幹部ではまだ最大負荷が掛っていて杖が後方に行 く時に負荷を抜きます。
問題は彼が前方で杖を突いた時点で、どうしても斜めに突いてしまう点です。突いた段階で
は負荷があまり掛っていません。この時にスポッと滑ってしまうのです。
制作した試作品は、理論的にある程度負荷(体重)を掛けないと有効とはいえない構造で
す。
当方の知る限り、軽い負荷から効果があるのは日進製のVくらいです。軽い負荷から限界点
までズズッ・ズズッとよく粘ります。しかもその彼にはVの試作品を使用してもらっていました。
新試作の本品を渡した段階で、そのVの溝は約三カ月の使用で中央が減って無く外周部程
半分以下に擦り減っていました。持ちをよくする為こまめに回して使用したそうです。
彼には19mmの加工ありを試験してもらっていました。最大負荷はVより有効なのですが、斜
め使用とVの性能を改めて感じました。
ここで一つの仮説を思いつきました。それは合成ゴムは原油から作られるので、Vは混ざって
いる油脂類を除去する加工が他社より優れているのではないか。
先日より何とか油脂類を抜こうと、種々調べながら実践しています。
重曹・炭酸ナトリウム・炭酸ソーダ・界面活性剤入り洗剤等何種類か試しました。
今のところ炭酸ソーダとマジックリンが良いみたいです。以下画像。
以下16mmの一般品。最初は杖を少し立てた状態で片手で軸方向に負荷を掛け滑る直前の
圧を撮影。次に杖をもう少し斜めにして垂直方向にも圧を掛けた限界圧を撮影。水と油。
Vは手元に16mmしか無いので、Vの軽い圧からの粘り具合と比較の為16mm一般品でテス
トしました。杖の角度と圧の誤差は多少あります。
結論から申しますと、炭酸ソーダ・マジックリンともVを上まわる軽い圧から喰い着き、V同様
にズズッとした粘り(先ゴムを手に持って押すと判ります)が出ました。手に持った感じではマ ジックリン(バス用では無く換気扇レンジ用です)の方が粘ります。
尚、今回判明したことがあります。それはS字の溝同士が斜めの接地面に当った時が一番滑
らないし、ズズッ・ズズッと粘る事です。溝を挟みWのS字のエッジ効果だと思いました。
気になる点は表面だけ油脂類が抜けたのか、中の方まで抜けているのかという点と時間が
経てば中から油脂類が染み出てくるのか。鑢で溝を半分位削れば判明するでしょう。
次は19mmのテスト画像です。今までアズワン製の硬いゴムを使用していましたがクラッチ杖
用だと思われ、この度は16mmと同じ製造メーカーの柔らかい先ゴムを使用する事にしまし た。仕入れ値は16mmと同値です。加工用はアズワン製の先ゴムを用い、クラッチ杖専用に使 用する予定でいます。
私が使用中の19mmアズワン製の加工なしのテストが一番良い結果でした。一皮剥けたの
が原因だと思われますが、使用者としては初期の感覚のままです。
私は自宅で自営していますので外出での歩行距離は非常に少ないです。杖を斜めに突き滑
った知人は平日は障害者作業所に通所していますので、歩行距離は一般の人と同等位と思 います。使用中のVの溝が約三か月で半分程減った感覚で、細溝の試作品(19mmの加工有 りアズワン製の新品)を同様に斜めに突いたことが一つの要因と考えられます。
因みに、歩行通勤等で歩行距離が多い人は、二か月程で市販の先ゴムの溝が無くなるそう
です。
その知人には柔らかい19mmの加工なし細溝を、鑢で一皮完全に剥いた試作品を試しても
らっています。
マジックリンに24時間浸すとVに劣らず、軽い負荷から粘りが出たのが確認できました。今
後は2日・3日と浸す時間を長くしてテストして見ます。
使用により完全に一皮剥ければ、油脂成分が中に残っていても大丈夫の予感がします。
松葉杖用も同様に約60時間浸しています。手で圧を加えた感じでは相当粘ります。さらに、
72時間浸したゴム板を使用した試作品を作ってテストしてみます。
マジックリンに72時間浸したゴム板を24時間放置し加工(24時間圧着)、計48時間後鑢
掛けし、さらにマジックリンに24時間浸した試作品のテストです。
今回はネック付16mmと柔らかい19mm加工なしのVとの比較です。水でのテスト。
左より16mm細・ネック付V・同細・19mm加工なしV・同細。尚Vは鑢掛け無しでマジックリンに
も浸していないノーマル品ですが、試験的に若干外で使用したゴムです。
表面だけ油脂類が抜けたと仮定した場合、時間の経過とともに中に染み込んでいる油が表
面に出てくると思われます。最後の追試でテストしましたが3日間位では変化が無いようです。
鑢掛けしてさらにマジックリンに24時間浸したのは、完成直後テストしたらVより粘りが無い
ので鑢を掛けてテストして見ると変化なし。
前回までは鑢を掛けた完成品を直にマジックリンに浸していましたので、鑢を掛けた方が油
分が抜けやすいと思ったのです。
私が使用している硬いアズワン製の一皮剥けた物は非常に粘りがありますので、何もしなく
ても一皮剥ければ完成品が出来あがるのと思い、以下最後にテストします。
やはり鑢で削ると有効ですが、道路等で実使用の物と比較すると粘りが全然違います。使用
中に中の油分が徐々に抜けたような感じです。
手に持って押すとキュッと滑り、使用中の物はズズッ、ピタッと止まり粘ります。
手間が入ってもマジックリンに72時間浸した後、鑢掛けの後さらに24時間浸した方が、初
期の安心感があります。使用により一皮むけるまでの安全策と思います。 |